成人看護学領域

研究指導教員

本庄 恵子

成人看護学 教授(慢性看護学、クリティカルケア看護学、成人看護学)

成人看護学領域の責任者をしていて、慢性看護学領域、クリティカルケア看護学領域の両方を担当しています。

私は、病いを持つ人のセルフケア能力を高める支援について、探求してきました。「セルフケア能力を高める支援」は、人々のもつ潜在的な力に目を向けて、その人自身の「どうありたいか」を尊重し、その人自身が意思決定していけるような支援です。私自身が修士課程・博士後期課程で作成したセルフケア能力をはかる質問紙「SCAQ」を活用して、現在、「セルフケア看護のプログラム」を大学教員と臨床看護師の有志メンバーとが協働しながら、探求・展開しているところです。

大学院修士課程・博士後期課程での研究疑問や課題は、生涯にわたって探求していくことのベースとなるとても大切なものだと思います。どうぞ、それぞれにユニークや研究疑問や研究課題をもって、成人看護領域にいらしてください。みなさんのそれぞれの課題の探求をサポートしたいと思っています。

そして、看護における研究・境域や実践は、教育研究者と実践家との協働が必要です。成人看護学領域に入学したみなさん、そして、修了したみなさんとのネットワークを大切にして、看護実践家と研究・教育者がつながりあいながら、それぞれの強みを生かしながら、みなさんと共により良い「看護」を探求していきたいと思っています。

三浦 英恵

成人看護学 教授(クリティカルケア看護学)

成人看護学領域でクリティカルケア看護を担当しています。

私は今まで「循環器疾患により手術を受けた人々の回復過程と看護ケア」について研究をしてきました。最近では「心不全の看護ケア」や、「災害時の看護ケア」にも関心を持ち研究を行っています。

成人期の病いをもつ人びとは、慢性期、急性期を行きつ戻りつしながら経過することも多いのではないでしょうか。本学の成人看護学領域では、慢性、急性、それぞれの専門性を高め合いながら、合同でのゼミを通して、慢性・急性の両方の考え方、知識を深め、関心領域を探究することができます。私自身もクリティカルケアを専門としながらも、病院のケアにとどまらず、生活の場での回復を見据えた視点、慢性期、さらにはその人の人生を見据えたケアを大切にしています。

クリティカルケアを受ける人びとへの「Comfort care」がとても重要です。鎮痛・鎮静薬が投与されることでComfort がもたらされることもありますが、キュアとケアをつなぎ、その架け橋となるような Comfort
care を実践できる看護師の育成を目指しています。

専門看護師を目指す方、クリティカルケア看護を探究し、研究を学んでいきたいと思っている方は是非一緒にがんばりましょう。ご入学をお待ちしております。

領域の特色

成人看護領域の特色

成人看護学は、急性期から慢性期に至るまで、疾患をもつ人びとやその家族に対するケアに関する幅広い領域を網羅しています。私たちは、皆さんの関心に沿った研究テーマを探求できるようにサポートしています。

本学の成人看護学領域の特徴のひとつは、慢性疾患看護とクリティカルケア看護の両方がひとつの領域にあるということです。

病いをもつ人とその家族は、病状が常に一定ではなく、重篤な状態の時もあれば、比較的安定している時期もあり、急性期から慢性期までさまざまな時期を体験しています。クリティカルケア看護と慢性看護の両方がある本学の成人看護学では、急性期の専門的な知識と慢性期の専門的な知識を学び合いながら、それぞれの専門性を深めていくことができるのです。

また、私たちの成人看護学では、臨床での疑問やフィールドワークを大切にし、ゼミ形式の演習でのディスカッション等を通してその内容を深めていきます。研究方法は、研究テーマに応じて量的研究または質的研究を選択しています。皆さんの関心に沿って、サポートしていきますので、安心して学んで下さい。

成人看護学領域では、ケアを良くしていきたいと思っているみなさんとご一緒に、看護を探求していけることを楽しみに、皆さんの受験をお待ちしています。

慢性疾患看護とクリティカルケア看護の交流

本学の成人看護学には、「クリティカルケア看護」と「慢性看護」の(CNS)専門看護師コースがありますので、演習などで互いに交流をしながらそれぞれの専門性を深化させることできます。

それぞれのCNSコースの実習では、これまで本学を修了して活躍しているCNSのいる実習施設などで、実践的な学びを深めることが可能です。

実習においても、研究においても、クリティカルケア看護と慢性看護のそれぞれの視点から意見交換をすることで、さまざまな気づきを得ることができます。時には、修了生のみなさんが、ゼミに参加してくれることもあり、そのようなときには、さらにディスカッションが深まります。

研究的な取り組み・社会的な取り組み

成人看護学領域の教員は、科学研究費助成金などの助成をうけて研究活動に取り組んでいます。

ここでは、一例を紹介します。

「疾患や障がいをもつ人のセルフケア能力を高める看護支援プログラムの普及と評価」では、成人看護学領域の教員たちと臨床の有志の看護師のみなさんとが協働で研究活動を展開しています。より良いケアを探求したいと考える研究者と実践家がともに、実践をよくするための研究的な取り組みをしています。

そして、定期的に「セルフケア研究会」という公開研究会を開催し、大学教員、臨床看護師、大学院生、大学院修了生がともに交流し、良いケアについて検討しあう機会を設けています。

私たち成人看護学領域では、研究と実践をたえずリンクさせながら、より良いケアを行いたいと願うみなさんとの取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。

院生・修了生の活躍

高津咲恵子さん

防衛医科大学校病院 慢性疾患看護専門看護師

2010年4月に、当大学院の看護学専攻 成人看護学領域 慢性看護学専攻に入学しました。桜が満開だった入学日は、期待と不安が入り混じった複雑な気持ちだったように記憶しています。すぐにシラバスを貰い、授業の組み立てをします。CNSの必修科目、慢性看護学領域の授業を中心に選択しますが、先輩方からのアドバイスも頂けますので安心でした。院生室は大きな1部屋で領域別で各個人に机が割り当てられおり、すぐに先輩や他領域の方々ともコミュニケーションがとれるので、環境的にも良い学び舎と呼べると思います。

さて実際何を学んだかというところですが、大学院という場所ですので、教授的な授業ではなく、自分たちで課題を調べ、プレゼンテーション・ディスカッションを通して、学びを深めていきます。つまり、課題に取り組むための幅広い視点から探求する力、自分の意見も述べ、かつまとめるための論理的思考、さらに他者の意見にも耳を傾ける柔軟性を身につけることを学びました。これは修了時に気付けたことかというと、私の場合、修了後働き始めCNSを取得し、その中で試行錯誤していく中で改めて実感しました。大学院での学びが基礎となり、自分を支えてくれています。勿論、本庄先生を始めとする諸先生方の手厚い指導を受けることもできます。修了後の今も悩んだり困った時の、かけこみ寺となっています。

いま大学院受験を悩まれている方には、自信を持って勧めたいと思います。

楠見和子さん

宮崎大学医学部附属病院 急性・重症患者看護専門看護師

2011年の春に「急性・重症患者専門看護師(以下CNS)」をこころざし、歴史と伝統ある本学に入学しました。2年間の大学院での学びは、CNSに求められている、高い専門性と実践能力について多くのことを学びましたが、一番の良かったと思うことは、純粋に「看護とは何か」について深く考える時間を持てたことです。自分自身の経験を振りかえるとともに、自身の看護の疑問や課題を、多くの先生方や院生と語りあえる貴重な時間でした。

3年前に大学院を修了し、現在は、宮崎大学医学部付属病院で教育担当副看護師長として勤務しています。臨床の教育に関わり、改めて『教え育てる』難しさを痛感しています。

また、CNSとしても2年目に突入し、活動のあり方や成果をどのように可視化していけばよいか模索する日々です。大学院での学びを、机上の空論にしないために、実践していくことが何よりも重要だと思っています。

大学院の2年間は、あっという間に過ぎていきます。多くの先生方から助言をいただいたゼミの時間、授業のプレゼン準備に追われる日々、そして領域を超えて語り合える院生の仲間達、どれも大事な私の支えです。これから日本赤十字看護大学大学院に入学を考えていらっしゃる皆様、充実した学びの環境、風土、そして看護に熱い先生方が、本学で待っています。大学院での2年間が、皆様の夢を叶える一歩となることを願っています。

中島千春さん

聖路加国際病院 急性・重症患者看護専門看護師

大学院修士課程での2年間は、私にとって本当に貴重な、充実した、すばらしい時間でした。同級生と審美知・暗黙知といった看護の知について、時間を忘れるくらい語りあい、ロジャースの看護論を理解するため、看護についても深く語りあいました。同級生と看護について語り合った時間は、何にも変えがたいものです。

ゼミでは、自分の研究疑問に関連すると思われる「文献を読み・まとめ・発表する」といったことを繰り返しました。研究のテーマやその研究の意義を理解してもらうには、どのような内容の発表をしたらよいのかを、いつも考えていました。時に、「今日の発表は、失敗だったな。」と思うこともありました。しかし、ゼミでの発表・ディスカッションを繰り返し行ったことは、現在の臨床においても大変役立っています。専門看護師としての活動を理解してもらうための、物事の進め方・周囲への伝え方といった思考と同じなのです。授業・ゼミを通して、看護研究について多くを学び、現在研究倫理委員の一員として、看護師や医師の研究の査読も行っています。

大学院での2年間は、るん!るん!といった楽しさではありません。時には、「どこに進んでいるのかわからない。」といった思いも感じます。自分なりに一生懸命に、課題や研究と向き合った結果、大きな充実感と達成感を感じられるのが大学院の2年間だと思います。

さぁ!勇気を出して!大学院へ一歩踏み出してみてください!

学位論文テーマ

博士論文テーマ

  • 糖尿病とともに生きる人への待つ看護モデルの開発
  • 一般外科病棟における後期高齢者の術後回復を促進する熟練看護師の卓越したわざ
  • 通院する壮年期がん患者を支援する外来看護師の協同的アプローチの進展:診療科を越えた「ケアを語る会」を契機として
  • くも膜下出血gradeⅠ‐Ⅱと診断された人の発症から1年間の体験:自分のからだの捉え直しと回復
  • 終末期ケアに携わる透析スタッフのためのピアサポートの展開とその意味 : アクションリサーチを通して
  • 血液透析を導入した患者の妻の体験 :透析導入後3か月までの語りを通して 
  • 糖尿病患者に対する外来での看護師よる療養支援モデルの効果:食事・運動に焦点をあてた15ヶ月間の無作為化比較試験

修士論文テーマ

 

  • 脳死患者の臓器提供の判断を行う家族への救急・集中治療領域の看護師の関わり
  • 意思疎通が困難な患者の「その人らしさ」を捉え尊重するICU熟練看護師の関わり
  • 集中治療室の長期滞在を余儀なくされた心臓手術患者の回復を目指した看護ケア
  • 慢性腎臓病の保存期にある人が療養法を生活に取り入れていく体験
  • 救急外来におけるリーダー看護師の調整のための思考と行動
  • 集中治療領域において差し迫る生命の危機にある患者の家族に対する熟練看護師の看護
  • 救命救急センターの集中治療室における患者の家族への関わり:成人前期の患者の家族の事例を通して
  • 集中治療室に緊急入室した意識障害がある患者と家族への面会時の看護師のかかわり
  • 新人から継続して集中治療室に勤務する看護師の経験:臨床判断能力の習得に焦点を当てて
  • 患者の意思を尊重したEnd of Life Care:クリティカル領域の看護師が語り合うことを通して
  • 糖尿病をもつ成人期患者の語りを引き出す看護師の「聴く」を支えるもの
  • 特発性肺線維症をもち生きていく人が生活体験を通して見出す希望
  • 一般病棟における周手術期患者の重篤化を予測した看護実践
  • 急性期病院に勤務する病棟看護師のセルフケア支援のやりがいの様相
  • 知的障害と糖尿病を併せもつ人への内科外来に勤務する看護師が行う在宅療養支援の実際
  • 糖尿病をもつ人の腎代替療法選択過程における看護の継続性:診療科の変更や病期の変化に焦点をあてて
  • 糖尿病性腎症で血液透析療法を受ける人の維持期を生きる体験