おたよりリレー 大谷 則子さん(修士課程9回生)
大谷 則子さん(修士課程9回生)
国際医療福祉大学
成田看護学部看護学科 教授
大学院30周年に寄せて
この度は、日本赤十字看護大学大学院開設30周年おめでとうございます。このような節目を迎えられたこと、心より嬉しく思います。
修士課程に入学するきっかけとなったのは、臨床でプリセプターとして新人看護師を指導していたある日、突然プリセプティが退職をしたことでした。彼女に何が起きたのだろう、新人看護師を教育するとはどんなことなのだろう、という疑問符ばかりが頭を渦巻いていたことがきっかけとなりました。大学院時代は、学びたい欲に自身の能力が追いつかず、文献を読み込み、本質を他の学生に伝えるプレゼンもままならず、何度も落ち込んだことを思い出します。霧の中をさまよい続けながら落ち込む私を寛大な心で見守り続け、ときに考え方を導くすべを示してくださった当時の先生方や、専攻は違っても一緒に悩み考えてくれた同級生には感謝するばかりです。
また、修士課程での授業は現在の私自身を形作っているような気がします。修士課程で学んだ複雑系という概念は、私にとってとても新鮮でかつ腑に落ちるものでした。自分が複雑系の中で生きていることを初めて知った時の鮮烈な驚きは今でも覚えています。
修了後は、大学の教員となりました。基礎看護学の教員をしながらも、臨床への関心は薄れることはありません。私の関心は修士課程に入学するきっかけとなったそのころからずっと、臨床で働く看護師にあります。看護師が現場でどのようなことを感じ、考え、経験しているのか、そこにはどのような臨床の知が埋め込まれているのか、記述的に明らかにすることを目指した研究を続けています。
これから大学院へ進学をされる皆さまは、学ぶとはこれほど尊いものなのだと目から鱗が落ちることもあれば、学問の奥深さや難解さに心折れる日もあるかもしれません。しかし、人生の中で自由に学問を探究できる時間があるというのはなんと贅沢なことなのか、と私は今改めて感じます。どうぞ学ぶことをあきらめず、楽しんでください。そしていつの日かともに看護を探究できればと願っています。