おたよりリレー 深谷 基裕さん(修士課程14回生・博士後期課程14回生)

深谷 基裕さん(修士課程14回生・博士後期課程14回生)

愛知医科大学
看護学部母子看護学領域(小児看護学)
准教授

大学30周年に寄せて

 私は看護系大学を卒業後、小児専門病院のNICUで働いていました。病棟業務に慣れ、臨床4年目くらいから、子どもへの看護について迷い、戸惑いを感じることが増えていきました。感性と慣性のバランスが崩れていき、特にNICUに長期入院し退院のめども立たない子どもたちとその家族との関わりから「看護」とは何か、もう一度立ち止まって考えたいと思い、進学しました。
 大学院入学後、小児看護学の講義やゼミに参加し文献を読みこんでまとめ、プレゼンテーションすることを繰り返し行いました。それまで読んだことがない理論や専門書の翻訳本などは日本語なのに、その中身が理解できずに呆然としたことが何度もありました。英語は勿論日本語の本もその読み方から学び直し、何とか発表資料を作り、原稿を読み上げて発表をしていました。しかし,指導教授から「それはプレゼンテーションではない」と指摘され、やり直したことが複数回あります。抽象的な説明で分かりにくいという指摘が途中からわかったのですが、その当時はプレゼンテーションの仕方も分からず大変なところに入学してしまったと後悔したことがあります。先生方、同期の院生や先輩方に支援してもらいながら、プレゼンテーションのコツをつかみ、新たな知識や技術の引き出しができ、視野が広がり、臨床での出来事を今までと違う視点で解釈することができるようになりました。
 修士、博士後期課程では、喘息をもつ子どもたちの体験を理解するため、救急病院、小児科クリニックでフィールドワークを行い、子ども、その家族そして医療者の声を現場で聞き、記録し、まとめていきました。振り返ると大学院の5年間は、臨床から離れて地に足をついて立ち止まって1つの研究に没頭できた贅沢な時間だったと思います。
 私は大学院修了後、小児看護専門看護師になり7年間活動しました。現在は看護系大学で小児看護学を教えています。厳しいなかにも、子どもの最善の利益を考えた先生方の指導をもとに、目の前の学部学生の教育に関わっています。先生方をはじめ大学院でお世話になったすべての方との出会いや交流が、現在の私の拠りどころとなっていることに、あらためて感謝申し上げます。
 母校のますますのご発展を心よりお祈りしております。

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