おたよりリレー 猪狩 遼子さん(修士課程26回生)

猪狩 遼子さん(修士課程26回生)

ミシガン大学

日本赤十字看護大学大学院の開設30周年を心よりお祝い申し上げます。

 私が修士過程に進学したのは、病院内外で携わってきた災害看護実践の災害フェーズや対象のフィールドが限定的で、より広く専門的な視野を拡大する必要性を感じたことが始まりでした。
 大学院の授業では、文献や公的文書から理論や制度を学び、理解したことを言語化し、教員や同期との議論を通じてまだまだ理解が不十分であることに気づく、その繰り返しでした。正しい言葉で論理的に伝えることの難しさに、何度も打ちのめされたことを覚えています。また、視野を広げるという点で特筆すべきは、国内外の地域防災実習です。地域防災における官民学の連携の実際について学び、国内外で地域防災に貢献する日本赤十字社の存在の大きさと、災害看護のスペシャリストである教員陣のリーダーシップを目の当たりにし、対象のおかれている状況や文化的背景の理解と尊重が重要であることを学びました。さらに、専門科目のほか看護政策や医療経済学、情報科学の受講を通じ、専門職として多角的な視点から事象を理解し、課題解決に向け検討する視点を養うことができました。
 修士課程修了後は病院勤務に復職し、COVID-19のパンデミックによる混沌とした状況で、倫理的課題を含むさまざまな困難に直面しました。修士課程の2年間で学んだ理論的基盤を日々の中に具現化するよう努めることが、大きな助けとなったと感じています。また、現在はアメリカミシガン大学看護学部の研究補助員として、高齢者を対象とした災害看護領域の研究プロジェクトに携わっています。アメリカの医療保険制度や人口構造は日本とは異なるため、日本の状況と比較しながら研究課題に取り組む中で、これまでにない視点を得る毎日です。
 大学院で学んだことの全ては、私の看護師としての成長や人間的な深化に不可欠なものとなっています。いつも粘り強く指導してくださった教員の皆様、時間を忘れ、ともに議論した同期をはじめとする皆様方に対し、深く感謝の意を申し上げます。
 日本赤十字看護大学大学院の今後益々のご発展をお祈り申し上げます。

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