看護管理学領域

看護管理学領域 概要

革新的かつ創造的な看護管理者や看護管理学研究者の育成を目指す

看護管理学の基本概念である「看護サービス」「組織」「環境」を結ぶ「管理過程」と「政策過程」「経営管理」に関する理論的な探求を通して、革新的かつ創造的な看護管理者や看護管理学研究者の育成を目指しています。講義・演習は看護を取り巻く社会の動向に合わせたテーマに沿ったプレゼンテーションを中心に、院生の主体性を尊重しながらともに学習していきます。また、医療施設が激変する時代に求められる看護管理者の能力開発を支援するために、実務を継続しながら学習・研究ができるよう講義を集中的に組み、2年次には実務に戻り実際の看護管理を探求して論文を作成していくような学習プログラムを取り入れております。

研究のテーマとしては医療制度・政策等の変化に伴う看護業務や看護師・看護管理者の行動や考えの変化等、対象・内容・研究方法ともに幅広く行われております。看護サービス管理、経営、政策に興味のある方、疑問への解決方法を見出したい方など、学習意欲のある方々の参加を望んでおります。

研究指導教員

安部 陽子

日本赤十字看護大学 教授(看護管理学)

私は日本赤十字看護大学を卒業後,米国ミネソタ州にあるミネソタ大学で修士課程・博士課程を修了しました。大学生の頃から看護職の職場環境に興味があり,ミネソタ大学ではオリジナルのマグネット・ホスピタルで看護部長をしていた教授の下で学びました。

現在日本では,少子高齢化から労働力の不足が予測され,女性に出産することと就業することが期待されています。そこで私は出産したいと望む看護職が出産でき,就業を継続できる環境について調査を進めているところです。

学内では組織行動学,看護政策論,看護管理学演習(文献レビュー),看護管理学特別研究Ⅰ(研究計画書の作成),看護管理学特別研究Ⅱ・Ⅲ(研究の実施)などを担当しています。「楽しく学ぶ」をモットーに実践に役立つ授業を行っていきたいと考えています。

領域の特色

研究活動

看護管理の視点から,問題解決の一助となる研究を行うための基礎的能力を身に付けます。そのため,それぞれの院生が実践の中で抱いた問題意識を大切にします。文献レビュー,研究計画書の作成,研究倫理審査委員会への書類提出,研究の実施,発表資料の作成,論文執筆まで,院生の希望に応じて丁寧に指導しています。

教育活動

実践コースには,社会人集中履修と社会人長期履修の院生がいます。また,研究コースには通常(フルタイム)履修の院生がいます。授業では院生の主体性を尊重しながら,発表・討議・フィールドトリップを通して学習を深めていきます。実習では組織分析・戦略立案・リコメンデーションの発表や研究計画の実現可能性の探索を行います。

社会貢献と実践 看護管理事例研究会

1年に3回程度,原則として土曜日の午後,本学の修士課程修了生を中心に看護管理事例研究会を行っています。修了生による看護管理実践の報告や,院生による研究の発表を基に意見交換を行い,看護管理学の知識の共有,問題解決,相互交流を図っています。

院生・修了生の活躍

吉田州太郎

2015年度 修士課程在学中

私は、日本赤十字看護大学を卒業後、高度な医療技術や医療機器に囲まれながら循環器病棟およびICUの看護師として7年働きました。在職中から日本の医療技術や医療機器が海外へ輸出されているのを知り、日本の看護も輸出できないかと考えていました。退職後社会人向けの語学留学に参加し、外国人相手に日本の看護を語ることができず、学びなおす必要があると強く考えるようになりました。母校で看護管理の視点で、日本の看護を見つめなおしたいと思い、この領域を選択しました。

私には看護管理者としての経験はありませんが、同級生である看護師長・元看護部長から日々刺激を受け臨床の看護管理とは何かを教わっています。また看護管理学実習では実習場でさまざまな看護管理者と対話し、看護管理の視点から実習場の分析を行った経験が大きな学びになりました。

将来は、海外に進出し、日本の看護管理の知識を活かし世界に貢献したいと考えています。

小野寺三喜子

2015年度 修士課程在学中

私は、都内大学病院の看護部長・副院長職を経て、昨年本学に進学しました。看護現場や医療を俯瞰できる立場になればなるほど、このままではいけないと学習の必要性を強く感じ、看護管理学領域を選択しました。看護管理者の行動が看護の質に影響することから、研究テーマは看護管理者の支援に焦点をあてています。一日が24時間では足りないというくらいレポートや文献検索に追われる毎日ですが、仕事とは違う刺激があります。

政策論の授業では、診療報酬が決まる会議の傍聴、国会議員への要望書提出、メディアへの投稿、元国会議員の授業など、看護現場を変えるための政治や法律を動かす仕組みを体験しました。当領域は管理者経験の有無は問題ではなく、今の現場を変革したいという意識があれば十分討議に参加できます。そんな同級生に囲まれ、若い人達の豊かな発想に驚きながら、自分自身もどう変ることができるかに挑戦しています。

畠山知子

2014年度修士課程修了生

私は、大阪堺市にあるベルランド総合病院に勤務しています。助産師として産科に入職後、「ハイリスク新生児の看護を学びたい」と考え、NICUに異動しました。現在は、認定看護師,看護師長として病棟管理に携わっています。

私が大学院に進学したいと思った理由は、「看護を学問として学びなおしたい」という強い思いからでした。そして、看護師長となりさらにその思いを強くしたとき、上司から本学大学院の実践コース(社会人・集中履修)の存在をご紹介頂きました。実践コース(社会人・集中履修)は、1年間休職し2年目は復職して仕事をしながら修士論文を作成し修了を目指すコースで、1年間の休職で済むことは大きな魅力でした。

大学院では看護管理学の理論を学習すると共に、自分の研究疑問に沿った実習*がカリキュラムとして計画されていました。これらの経験は、私がフィールドとしている周産期領域を様々な角度から読み解き、さらに発展させていくための考えを明らかにすることに役立ちました。また、他領域の院生との交流も盛んで、そこで交わされた議論は大きな刺激でした。2年次は、大阪から新幹線で通学し想像以上に辛かったです。しかし,東京では院生に戻り学問に集中できるため、修士論文の作成に取り組みながら、さらに日常の臨床現場で常に起こる課題を克服する糸口を見つけるきっかけにもなりました。

くわえて,大学院を修了した現在も、看護管理学研究会を通し先生や院生・修了生が一堂に会し、看護管理の喜びや困難さを共有する機会があるのも非常に有難いです。大学院での学びを糧に、既存の枠にとらわれない看護管理を探求したいと思います。

* 2015年度から実習の内容は問題解決課程の適用に変更されています。

学位論文テーマ

博士論文テーマ

  • 看護師長の看護管理能力測定尺度」の開発と関連要因の検討
  • 現任教育の一環として臨床看護研究を行った看護系大学出身の中堅看護師の経験

修士論文テーマ

  • 地域医療支援病院の外来看護師長が語る外来看護の課題と対応
  • 中規模病院の副看護師長が看護管理経験から得る学び
  • 急性期病院における看護師長同士の関係性の看護管理への影響
  • 病院内委員会活動に参加する25歳から34歳の女性看護師の役割に対する認識
  • 造血幹細胞移植チームの医師と看護師間の倫理的問題と看護師長の対応に関するナラティブ研究
  • 優れた看護部長のライフストーリー
  • DPCⅢ群の急性期病院の一般病棟における看護師長の適正な看護配置
  • 看護師の離職が多い病棟で離職を減少させた看護師長のマネジメント
  • 認定看護師を部下に持つ病棟看護師長の看護の質向上のためのマネジメント: 慢性呼吸器疾患看護認定看護師に焦点をあてて
  • 就任3年未満の師長同士による「フレッシュマネジャーの会」のアクションリサーチ
  • 対応が難しい新卒看護師のいる病棟の看護師長のマネジメント
  • 病院機能の転換に伴い看護師長が経験する状況の言語化: アクションリサーチを通しての看護管理プロセスの明確化
  • キャリア形成期に、子育てしながら就業継続している助産師のワーク・ライフ・バランスの構造
  • 他職種協働で取り組む退院支援のあり方: アウトカム・マネジメントを用いたアクション・リサーチを通して
  • 療養介護病棟における看護師と療養介助職の協働
  • 病院の変革期に看護係長が考える自らの役割: アクションリサーチの手法を用いて
  • 看護師長が導き出した病棟経営の方針と方針を導き出すプロセス-病床管理検討会を通して-
  • 急性期病院に勤務する看護師のロイヤリティによる職務満足度、離職意図の相違
  • 急性期病院において看護師が看護補助者に患者の直接的ケアを委託する際のマネジメント
  • 病院新築による看護提供環境の変化への適応を目指した病棟看護スタッフの取り組み~NICU・GCUの半個室化に焦点をあてて~
  • 看護師長が体験したクリティカルケア領域の終末期における倫理的ジレンマとその対応
  • 脳卒中患者の誤嚥性肺炎予防ケアに関する一般の看護師の問題解決における多職種チームの活用
  • スタッフの個人目標設定面談における看護師長のかかわり
  • 回復期リハビリテーション病棟における看護師の意識とケアの変化を起こすアクションリサーチ
  • 急性期病院の病床管理における病棟看護師長の意思決定
  • 急性期病院における看護師と看護補助者の協働の実態-直接ケアの提供に焦点を当てて-
  • 看護師が時間外手当を申請する際の判断
  • 急性期病院において慢性閉塞性肺疾患のグッドプラクティスを多職種協働で構築するプロセス
  • 社会人経験を持つ新卒看護師に対する看護師長のマネジメント-人的資源管理の視点から-
  • 看護師長ではない看護職医療安全推進者の役割遂行のあり様
  • 中高年女性看護師の看護実践のあり様-緩和ケア病棟に焦点をあてて-